地獄と向きあって44年 ―カネミ油症、苦闘の記録
本, 矢野 忠義
によって 矢野 忠義
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内容紹介 被害発生から44年の2012年8月29日 「カネミ油症被害者救済法」が成立。 1968(昭和43)年、西日本を中心に広がったカネミ 油症被害は食用油がダイオキシン類に汚染されてい た悲惨極まりない食品公害事件だ。 被害は身体の異常にとどまらず、加害企業や行政の 驚くべき杜撰で冷徹な対応に被害患者は心も生活も ずたずたにされていく。 本書は、油症被害の真実を追い求め、国や企業の責 任を問い続けた夫婦の壮絶な物語である。悲劇を繰 り返さないためにも、決してこの問題から目をそむ けてはいけない―― ※巻末に詳細資料を添付 化学物質の汚染は、カネミ油症にとどまらず、水俣 病、森永ヒ素ミルク、毒入りギョウザ、と後を絶た ず、人体に入った化学物質は一生にわたり、いや、 子や孫の代まで影響を引き起こしかねない。カネミ 油症問題を知ることで、今私たちが直面している食 品公害の怖さを再認識するという意味でも、ぜひ読 んでもらいたい一冊である。 内容(「BOOK」データベースより) 被害発生から44年の2012年8月29日、「カネミ油症被害者救済法」が成立した。油症は、世界でも類を見ないダイオキシン類による悲惨極まりない食品公害事件だ。本書は、油症被害の真実を追い求め、国や企業の責任を問い続けた夫婦の壮絶な物語である。悲劇を繰り返さないためにも、決してこの問題から目をそむけてはいけない。 著者について 矢野忠義(やの・ただよし) 昭和7年香川県生まれ。昭和48年カネミ油症と認 定、油症患者グループに参加。昭和50より代表。 昭和60年油症福岡訴訟団結成、代表。現在、油症 医療恒久救済対策協議会会長。 矢野トヨコ(やの・とよこ) 大正11年愛媛県生まれ。昭和43年カネミ油症と認 定、47年から未認定患者の掘り起こし運動に奔走。 油症患者グループを組織する。平成19年逝去。 著書に『カネミが地獄を連れてきた』。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 矢野/忠義 旧姓・柳澤。学歴:昭和23年飯塚市稲築町中学校卒業。現在、油症医療恒久救済対策協議会会長、油症福岡県連合事務局長。1932年10月8日香川県高松市兵庫町で出生(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 続きを見る
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被害発生から実に44年。昨年8月29日、ついに「カネミ油症被害者救済法」が成立し、大きな節目を迎えた。この著作は、悲惨極まりない油症被害者救済の先頭に立って戦い続けた夫妻の、あまりにも壮絶で生々しい魂の記録である。前半の「第1編」は、今は亡き奥様のトヨコさん(2008年逝去)が1987年に著した「カネミが地獄を連れてきた」の再録。後半は、夫の忠義さんが今回書き下ろした「第2編」で、「続・カネミが地獄を連れてきた」となっている。巻末には、訴訟や会議の記録、要望書、治療研究費の推移や国会答弁に至るまで、実に詳細な資料が掲載されている。当初、PCB中毒と思われていた油症が、途中で、猛毒・ダイオキシンの被害であることが判明した。それだけに、矢野さん夫妻の症状も、すさまじい。全身に湿疹、吹き出物や目脂、倦怠感、急激な下痢、頭に錐を突き立てたような痛みなど、読んでいてもその苦痛が迫ってくる感覚に襲われる。その体を押して、極限的な闘争を続けてきた、すさまじいまでの執念に、ただただ頭が下がる。この本は、描かれている問題の性質上もあり、決して面白いといった類のものではない。だが、生身の人間が最も大変な逆境に追い込まれた時、その行動の中に、人間の偉大さも卑しさも炙り出されてしまうことを教えてくれている。矢野さん夫妻の誠実一路の生き方は、文章と記録された事実ににじみ出ている。そして、真に力になってくれた人々は誰か、逆に、闘争に身を寄せながら、自らの利益や名誉を優先したのは誰なのか。実名とイニシャルを用いて、明確に刻印されている。矢野さん夫妻が、心身を苛み続ける闘争を、何のために続けたのか。トヨコさんの言葉が印象的である。「加害企業や人間不在の政治家たちに、慰謝料と引き換えに、免罪符を与えてやるのだ。決してもらうのではない。侵されて生きる我々の権利を、しっかり腹に据えて自覚してもらいたかった」。現に、矢野さん夫妻は、闘争の期間、相当な自腹まで切っており、自らの補償という次元では、まったく“割に合わない”戦いを続けてきた。数々の嫉妬や裏切り、蔑みまで経験しながら、加害企業に「正義」を促し、未認定の患者まで一人でも多く救済しようと奔走している。それは、加害者、被害者を問わず、人間の尊厳を取り戻すための、魔性に対する闘争の様相を呈している。私は、矢野忠義さんにお話を伺ったことがあるが、温厚ななかに芯の強さを感じる人柄に対し、かねがね敬愛の念を抱いていた。今回、この書に触れ、これまでとはまったく違う次元で、矢野さんご夫妻の偉大さに、神々しいまでの尊さを感じることになった。この書は、日本の「昭和」という時代に起きた「カネミ油症事件」を、人類史に永遠にとどめるべく、細く、しかし深く長く、読み継がれていくに違いない。
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